ヒントン・アンプナー Hinton Ampner House
次はナショナル・トラストのプロパティーのヒントン・アンプナーに来た。
お館は18世紀から幾度も改修を重ねられたが、1960年の火災で大きな損傷を受けラルフ ・ダットン男爵(Baron Ralph Dutton)により改築されたものだ。
白いエントランスや窓枠が美しく招くが(写真下左)、ここは幽霊が出ることで有名なのだ。君子は危うきに近寄らずとか、ガーデンに回ろう。
第8代(最後の)シェルボーン男爵だったラルフ ・ダットン卿は1930年代に父からエステートを受け継ぐと家を改築し、”20世紀デザインの傑作”
と賞賛されるガーデンを造ったのだ。20世紀デザインということはガートルード ・ジーキル等が確立したアウトドア・ルーム方式ということだ。
しかし、ここのアウトドア・ルームはスケールが大きい。一つひとつのルームが大きく、その接続も緩やかなものになっている。さすがに男爵様のデザインだ。
ハウスの東面に回り込むと"Lily Pond and Lawn"が端整な佇まいだ(写真上左から2枚目)。今日の気温では噴水が肌寒さを助長する。
その並びに"Yew Garden"がある(写真上右から2枚目)。整然と刈り込まれたイチイの生垣に囲まれている。半球の刈り込みも素晴らしい。
残念ながら植栽はチューリップと勿忘草からダリアへの端境期だが、ベッドの縁取りはフウチソウの種類だろう。鮮やかな色だ。
ハウスの南面がメインのガーデンだ。4段のテラスに整形式(フォーマル)ガーデンが配置されている。ハウスの壁に沿ってボーダーが連なるのが1段目のテラスだ。
2段目はエリゲロンが見事に張り巡った階段(写真右)を下りた広大な芝のテラスだ(Main Lawn)。1段目との段差の斜面に100mを超える潅木と宿根草のボーダー・ガーデンがある。
更にエリゲロンの階段(写真下左)を下りたテラスが"Long Walk"と名付けられたガーデンだ(写真上4枚、下2段8枚)。
ロング・ウォークの名の通り170mを越える長さだ、ここがこのガーデンの目玉となろう。
階段を下りた左右はキノコ型(私には宇宙人のように見える)のトピアリーが特徴的なガーデンがある。(ここの植栽も植え替え期のようだ。)
その先には整然と並ぶイチイの並木の両脇に重厚な植え込みのボーダーが続く。一場面一場面が驚きとため息の連続となる(写真上左から2枚目)。
上右から2枚目はジャーマンアイリスとバラ、下左はセイヨウオダマキとバラ、2枚目がジギタリスとバラ、シャクヤクとバラといった具合だ。
そして、ロング・ウォークの西の外れにはサンダイアルが(写真上右)、東の終わりには女猟師ダイアナの像がある(下右)。フォーカルポイントにも長大息。
サンダイアルで折り返し、イチイ並木の南側のボーダーを歩く。写真下左は白いジギタリスと黄色のセイヨウオダマキの組み合わせがなんとも爽やかだ。
2枚目は”今日の見頃の花”の表示があり、人が群がっていたシャクヤク。香りも良くまさに満開だ。
3枚目はキャットミントとジギタリス、バラだ。馥郁たる香りが立ちこめる。背景のハウスとも見事にマッチする。
そして、右はゲラニウムの葉だが花の形が少し違う珍しい植物とバラの組み合わせだ。
花にばかり注目が行くが、ラルフ ・ダットン卿が"My interest lies more in shrubs than in flowers"と言っているように潅木が効果的に多用されている。
潅木が草花を支え、潅木の葉色や形が草花を引き立てる。真似したくても難しい芸当だ。
宇宙人のトピアリーの東側のボーダーに"TheTemple"が建っている。小さなものだが、なかなかにロマンチックな風情がする。
カップルがお喋りしていて正面からの撮影が出来ないのが残念だ(写真下左)。
メインガーデンから離れ、林の中を北に進む。ここでも大きな樹木の下に潅木と草花が組み合わされている(写真上右)。
その先に教会が現れる(写真右)。ラルフ ・ダットン卿始めご先祖の墓があるが、ナショナル・トラストの所有ではない。
"Walled Garden"の隣にユニークな形のトピアリーの生垣に囲まれたロッジがある(写真下左から2枚目)。こんなロッジに住んでいたら心弾む毎日だろう。
ウォールド・ガーデンは16世紀にはホップ園だったという。一部にボーダーはあるが(写真下右2枚)、主に果樹と野菜のキッチンガーデンとして、
2006年から一般公開されている比較的新しいものだ。
20世紀初期のガートルード ・ジーキルのザ・マナーハウスと中期のラルフ ・ダットン卿のヒントン・アンプナーという20世紀を代表するガーデナーの
素晴らしいガーデンの2連発にいささかノックアウト気味だ。安全運転で次に向かおう。
Address | Bramdean, near Alresford, Hampshire SO24 0LA |
Telephone | 01962 771305 |
Web Site | Hinton Ampner House |
オープンの日・時間や入場料は Web Site あるいは
Gardens Finder
Gardens Guideで確認ください。
「旅行記」もご覧ください。